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ドメインを取得する際に知っておきたいドメインと商標の関係

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ドメインは先に取得した方が所有し、使用できる権利を有します。ドメインを取得するにあたり、取得しようとしているドメインが正当であるかといった審査も行われることもなく、お金を払って契約するだけでドメインは簡単に取得できます。

しかしながら、インターネットが普及し、一般個人でもウェブサイトを展開しやすくなった今、実在している企業名や、企業が登録している商標と一致したドメインが増えています。

ドメインと商標登録の関係

商標は、企業にとって需要な知的財産であり、商標によってサービスや商品を識別するだけではなく、競合他社などから企業名やサービス名を真似されることは自社の競争を揺るがす事につながり、最悪の場合倒産などに至る場合があります。自社の利益を守っていくためにも商標はとても重要な役割を果たしています。

しかしながら、ドメインの取得は早い者勝ちであるため、例え商標と重なったとしても、ドメインの利用権利があってもおかしくないようにも考えられますが、既に、商標として登録されていた文字列は、商標を取得した者のみに利用する権利があり、商標登録者以外が利用する権利が無いのが事実です。

不正競争防止法改訂でドメインについての記述が盛り込まれる

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ドメインの取得が増えていくに連れ、商標と重なる事例が増加したため、2001年に行われた不正競争防止法の改訂ではドメインに関する記述が第2条第1項第12号に盛り込まれました。

不正競争防止法の第2条第1項第12号では、以下のように記載されています。

不正に利益を得る目的で、又は他人に損害を与える目的で、他人の特定商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章その他の商品又は役務を表示するものをいう。)と同一若しくは類似のドメイン名を使用する権利を取得し、若しくは保有し、又はそのドメイン名を使用する行為

そのため、ドメインを取得する場合は、あらかじめ、取得しようとしているドメインが商標に登録されていないのかをあらかじめ確認しておく必要があります。また、ドメインの一部に商標と同等の文字列にすることや商標に類似したドメイン名を取得することについても、消費者が混乱を招く恐れがあるため、仕様の制限がされています。

ドメイン名の不正使用は損害賠償請求の対象

ドメイン名が商標と重なった場合は、多くの場合では商標取得者から、ドメインとして利用できない旨の通知が行われ、ドメインの変更が必要ですが、その要求に応じなかった場合や、悪質な場合などは損害賠償請求をされる場合があります。

損害賠償は、不正競争防止法第5条第3項に盛り込まれており、不正競争により営業上の利益を侵害された者は、侵害した者に対して、損害を受けた額としてその倍賞を請求できるとしています。不正競争による損害の内容としては、「ドメイン」も対象となっています。

そのため、商標と同一のドメインを取得したことで相手が何かしらの損害を受けた場合、損害額が請求されます。

ドメイン名に関する実際の損害賠償事例

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ドメイン名が商標と重なったことで、実際に損害賠償を請求された事例が存在しています。今回は2001年に判決が出された、「イトーヨーカドー」と商標権が重なった事例を紹介します。

セブンアンドアイホールディングス傘下の総合スーパー「イトーヨーカドー」(申立人)は、神奈川県の中小企業G社(登録者)が取得した「itoyokado.co.jp」を申立人に移転するよう裁判を起こしました。

申立人は、総合スーパーの商標と同一であることや、商標の使用に対して許諾した事実が無いとし、商標法2条3項7号の「商標の使用」に反すること、さらに、登録者が対象のドメインを第三者にオークションサイトで転売しようとしていたことについて、高額で転売するために取得したとして、不正競争防止法2条1項1号の「商品等表示の使用」にあたるとしています。

登録者としては、イトーヨーカドーと類似していることは認めるが、デパート等のポータルサイトを運営するために、取得可能であった「itoyokado.co.jp」を利用した。2000年に諸事情によりサイトを閉鎖することになったので、ドメインを譲ることを検討したとし、ドメインは早い者勝ちであり、こちらに利用権限があることを主張し、ドメイン名はネット上の住所であり、商標法2条3項7号の「商標の使用」と不正競争防止法2条1項1号の「商品等表示の使用」に牴触しないと主張していました。

結論としては、ショッピングサイトを運営していたことから消費者が混乱をきたす恐れがあることや、登録者は、ドメイン名についての権利と正当な利益は有していないことから、ドメインを申立人に移転する判決が出されました。

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